ヘナは一晩寝かせたほうがよく染まるのか？

インドでは、「昔よりヘナは一晩寝かせてから塗る」、という話がある。これが実際にはどうなのか？実験してみた。

ヘナは水に溶かした後、１時間程度で塗るのが一番ヘナらしい染まり方をする

ヘナらしい染まり方とは、一番、赤オレンジ色が強い、という意味だ。上の写真の「０」は、水に溶かして０分、つまり溶かしてすぐに、その白髪束をヘナのペーストに投入して１時間で洗い流したという意味。同様に、「１」は、溶かして１時間後に、１とある白髪束を投入して１時間で洗い流したという意味。一番右の「２４」は、ヘナを溶かしてから２４時間後に２４とある白髪束をそのヘナペーストに投入して１時間染めて洗い流したという意味だ。

実験結果では、ヘナは水に溶かして、１時間後から染め始めるのが一番赤オレンジが強く染まると出た。あくまでこの実験ではという意味だが、実際にそうじゃなかろうかと思う。

上の「１」が一番赤オレンジが強く、「２」、「３」と続く。「４」以降は赤オレンジ味が失われてくる。ヘナは寝かせ時間は１時間程度がベスト、寝かせても３時間程度までだろうという実験結果。「４」以降になるとじょじょにヘナの赤味が減り始め、２４時間後にもなると、赤味がはっきりと目に見えて失われる。

ヘナ特有の赤オレンジ味が強い＝染毛力が強いと解釈すると……

ヘナの染毛力は、ヘナを水に溶かした後、１時間～３時間がピーク

ヘナの染毛力（ヘナの皮膚を染める力ではない！！）に関しては、昔から言われてきたように、ヘナは一晩寝かせる、ということはあたらないのかもしれない。ただし、皮膚に着色させるメンディアートの場合は、最低でも一晩、できたら、数日、オイルなどを足しながら、じっくり寝かせたほうが、皮膚への染まりは断然よいことがわかっている。ヘナの染毛力と、皮膚を染める力とは、原理が違うようだ。

参考記事

ヘナは一晩寝かせたほうがよく染まるのか？パート２

ヘナは長く染めたほうがよく染まる？ヘナの染め時間と染まりの関係

ヘナは鉄鍋で溶かして一晩寝かせるのがいい？

しかし、まったくよくわからないのが、ヘナの皮膚への着色と、髪への着色、この違い、これは歴然としているにも関わらず、どうも、インドの人も混乱しているようだ。そもそも、原理が何か、大きく違う。メンディアートをやる人たち、特にイスラム教徒の人たちが、「よいヘナ」という場合、皮膚に着色しやすいヘナのことを言う。日本のでも有名になったが、シャナーズ・フセインという女性はイスラム教徒であり、まはの滞在している場所の近所にイスラム街があるが、そこではシャナーズは大人気。ところが、インドでも、ヒンドゥー教徒たちはシャナーズは使わない。理由は、シャナーズの製品には、たまに動物系のものが使用されていることがあるからだ。宗教上の理由で、ヒンドゥー教徒は殺生をしないから……。

このイスラム教徒の、ヘナのバイヤーは、とにかく古いヘナを買い求める。土色をした、数年前の、古いヘナ。。。まはから見たら、半分腐っているのじゃない？といえるようなヘナを産地で買い付けていく。そのほうが染まるのだという。。。どこに？皮膚にです！ところが、こういう古いヘナは、髪、白髪には、実に染まりが悪い。。。だから、まはにはまったく用はないシロモノだが、メンディアートをこよなく愛するイスラム教徒たちにしてみれば、古くて、臭みが強く、半分腐りかかったようなヘナが極上と、そういうこと……まさしく捨てる神あれば拾う神あるの関係。

そういう文脈の中で、「ヘナを寝かせる」というやり方も考えることができる。ヘナを寝かせれば、寝かせるほど、ヘナ特有の臭みが強くなる。。。。ヘナを８時間も寝かせると、たぶん、なんらかの発酵が始まるのでは？と思えるほどに、ヘナの臭みが強くなる。同時に、染毛力も落ちてくる。だから、ヘアケア、髪に直接使うという観点からすると、溶かして１時間～程度、これくらいだと（鮮度のあるよいヘナの場合は）臭みも少なく、染毛力も強いので、この程度の寝かせ時間が適切だろう。 ところが、「皮膚に染める」という文脈では、寝かせたほうがいい。実際、メンディアートをやる人たちは、ヘナにオイルを混ぜ込みながら、何日も寝かせる。つまりこの「寝かせる」という行為は、ヘナを古くさせる、という行為なんだろうと思う。古いヘナだと、すでに最初の段階から古いので、何日も寝かせて、ヘナを古くさせる必要がない？　新しいヘナだと、ヘナを古くさせるのに、何日も寝かせなければならない……そういう理由で、メンディアートをするイスラム教徒たちは、古いヘナを好んで仕入れるのだろうと、考えている。