ヘナの塗り方・・ハケでヘナか、ヘナの本場・グジャラート流か？

さっきまでおしゃべりしていたスジャータさん、へナが始まると急に何もしゃべらなくなって、なんだか、リラックスしているように見える。ちょっとばかりへナが額につこうが、まったく気にする気配はない。

スジャータさんは、髪が腰まである長い髪・・・やっぱり自分一人でやるのは、なかなか大変。確かに、腰まである女性も一人へナしている。できないことはないね。ただ、人にやってもらったほうが楽チン。義理の妹さんにやってもらって、気持ちよさそうにしている。義理の妹さんは、単にハケで、ヘナを頭の上から、ぺちゃぺちゃ塗っているだけ・・・あらら、生え際までしっかり塗れるのかな？と思いながらみていると、そこはさすが。一通り頭の上からヘナを塗り終えると、今度は髪をかき分けて、ハケでヘナを地肌まで染み込ませている。途中、顔のよこやら肩にへナが付いたりしても、二人ともまったく気にしない。綺麗なサリーにも、ぽたっと数滴落ちる・・でも、ぜんぜん気にしない・・・へナでは服は、あまり染まらない、染まったとしても、緑色の服、しかも数回の洗濯で落ちてしまうのを知っているからだ。仮に顔に少しついたところで、ヘナでは髪以外は短時間では、あまり染まらないのを知っているから気にもしない。なれたもんだなぁと感心。（ただし、手の平だけはよく染まります。）

ハケへナについて思う

スジャータさんはへナを始めて、４年ほど。流行（はやり）だからだやっていると言っていた。彼女のダンナさんもへナを髪に使うのは、もともとヘナの産地であるラジャスタンやグジャラートのやり方だと言っていた。そのとき、まはははっと思い出した。ミーナさんやまはが最初にヘナをならったディプティという女性。彼女はグジャラート出身だった！　いまでも付き合いがあるけど、彼女は手でヘナする。しかも、やり方にめちゃうるさい。ヘナを溶くのはからなず紅茶の煮出し汁、ユーカリオイルは必ず使用すること。ヘナは溶いたあと鉄鍋で一晩必ず寝かしなさい・・・きっちりとやるべきことがいくつかある。それなりのこだわりは、ヘナ産地出身ならではの、伝統的なやり方だったのだと思う。

グジャラート流は、頭頂部にヘナダンゴを作るやり方

ヘナの産地グジャラート出身のディプティは、たっぷりと濃厚なヘナを練り上げて髪に盛り付けていく。ううん、ハケへナとヘナの本場グジャラート流・・・まははやはり本場流が好きだ。

ヘナを伝統的に使い続けたグジャラート出身の女性ディプティ(写真左の女性)。彼女はヘナを見るとすぐに触って、臭いを嗅ぐ。そうして、練ってみて、手触りと臭いで、これはいいヘナだとか、悪いヘナだと言う。ヘナの見分け方が、彼女の触覚と臭覚に身に付いているのだろう。

ディプティのヘナのペーストは、ハケへナを行ったスジャータさんのものと比べたらかなり濃厚。必ず紅茶でヘナをとき、一晩寝かせる。髪を少しづつ分けながら、髪を一束つかむと、まず地肌にしっかりと塗り、その一束の髪の先端までヘナを塗って、塗り終わったらその髪を頭頂部に丸めていく。そうして、どんどん丸めていって、お釈迦様の頭を作る感じで、最後にはヘナのブッダヘッドが出来上がるわけだ。彼女のやり方で長い髪の人がヘナすると、相当の重量のヘナが頭にのっかって、少し重たいくらい。まさにへナが豊富にある本場ならではの贅沢なやり方で、ヘナの色もしっかりと入る。

ハケへナは薄塗りで、トリートメント向き

それに対し、最近、この地方で流行りはじめたというヘナを行うスジャータさんたちのヘナのやり方は、紅茶も使わず、水で、かなり柔らかめに溶いたヘナをハケに染み込ませて、さっさと髪を掻き分けながら塗っていく。スジャータさんのような長髪でも、ヘナ100g程度しか必要ない。もともと、彼女がヘナするのは、髪染めが目的ではない。トリートメント効果があるし、気持ちいいから・・・。ヘナしてから、１時間ほどで洗い流してしまう。仕上がりも、ヘナ特有の色が薄くしか入らない・・・というか、まはは彼女の髪に艶があるのは気づいたが、それがヘナによるものとは気づかないほどにしか色は入っていなかった・・・。髪が太陽にあたるときらりとオレンジ赤に光る髪・・・スジャータさんの場合、太陽にあたっても、かなり控えめにうっすらとオレンジに光る程度。へナしているのがほとんどわからないと言っていいだろう。

ヘナトリートメント・スジャータ流は、なんと、ヘナの水練り！塩素が入っていない井戸水だからいいけど、日本だったら、湯冷ましのお湯くらいにしておいたほうがよいだろう。

ヘナトリートメント・スジャータ流

はっきり言って、人それぞれのやり方があっていいわけだ。人の髪質や髪の状態が違うし、トリートメントとして使いたいっていう人のヘナのやり方は、髪染めとトリートメントに伝統的に使用してきたグジャラートの人達とのやり方とは、おのずと異なってくるはず。長い髪のトリートメント・ヘナのやり方はいたって簡単。３枚連続写真の一番左に彼女の材料がある。水！！とヘナと、スプーンで皿に入れて見せているものは、髪によいハーブを４種ミックス（後で説明）したもの。大さじ山盛り４杯のヘナに大さじ山盛り１杯のミックスハーブを混ぜて、水に溶く。

やはり鉄鍋登場！

写真で水に溶かすところまで見せてくれたあと、彼女は傍らに置いてあったちょっと珍しい形の鉄鍋（写真右）を持ち出してきた。ここにすでに昨日練ったヘナがあるという。鉄鍋で練ってから一晩寝かしたものを髪に塗るのだという。この鉄鍋に、まはは驚いた。もともとメヘンディボールとして使われていたものではない。彼女がこれを勝手にヘナ用として決めて使っているだけ。鉄の表面がでこぼこした粗いもので、ヘナと鉄の接点表面積がかなり多そうで、これはいかにも鉄分がしみだすよなと思える鉄鍋だった。

トリートメントにも鉄鍋！なぜ？？

まはが聞いたところでは、鉄鍋は鉄バイセンの原理で、ヘナの定着がよくなるために、ヘナには必ず使用しなさいと師匠ディプティに習った。他のインド人に聞いても、昔からヘナには鉄鍋と決まっているという。手にメヘンディアートを描くときですら、ヘナを鉄鍋でペーストにしたものを使用する。鉄鍋から滲み出すごく微量の酸化鉄が触媒となって、ヘナの色が暗めにしっかりと入る、そういうことだと思う。ただ、最近、ヘナに鉄鍋の意味が、色だけでないような気がしているのだ。

鉄分が白髪抜け毛予防と関係しているのでは？？

ジェイン先生の白髪抜け毛予防へナセットには、鉄の粉が入っている。そして、地元のアーユルヴェーダの女医さんが調合している白髪抜け毛用ハーブのなかにも微量の酸化鉄が混ぜられている。鉄分は、ヘナの定着をよくするということだけでなく、どうも白髪予防とは何かの関係があるのではないだろうか？　毛根はメラニン色素を出していて、それが髪を黒くしていると美容師ミーナさんが言っていた。このメラニンが干上がると白髪になると・・・。そのメラニンとはたぶん、血液中から鉄分を吸収してメラニンを出しているんではないか？などと勝手な類推をしているまはなんだ。半ば干上がりかかった毛根はメラニン色素を出す仕組みが弱りかかっているが、そのときに、外部から鉄分を吸収させてやることで、髪の白髪化を予防する、遅くさせることができるのではないか？などと思っている。

まはの友人で、アーユルヴェーダに精通している人物が、「鉄分こそ、すべての色を出している」と断言していた。人体の血液中にある鉄分こそが、皮膚の色、髪の色、人体のあらゆる色を出す大本なんだと・・・。そんなこと思い出していると、鉄と白髪予防、鉄鍋とヘナ、これはきっても切れない関係なのだろうと思い始めている。昔から必ず使用されているものには、何かの意味があるが、現在までやりつづけられる中で、その意味自体が忘れられてしまう、そんなこともあるだろうと思う。